「何もかも私が悪いのです。私の決心が弱かったのです。透冴様に再び会うためならば、弟のことも忘れようと覚悟を決めたはずなのに……」

――弟、だと?

思わずはっとなった。

そうだ。
鼓水には弟がいた。

確か鼓水が巫女になった後すぐ、行商人の見習いとなり村を出て行ったと聞いていたが――まさか、あの男が……?

眩暈がしそうになり、私は鼓水から離れた。
その様からも、まだ私が怒っていると感じたらしい。
鼓水は必死になって言葉を続けた。

「像の前で涙を流す弟を、どうしても放っておくことができなかったんです。せめて、私は死んでいないということだけでも伝えられたら、と思い切って燿興様が相談したのです」

最早私は精魂尽き果てたようになっていた。

とんでもない勘違いをしたものだ。
穴があったら入って、一千年くらい籠っていたい……。