乱れた袖から白い腕が見えた。
目に付いたのは痛々しい焼き印。
私の妻である女の身に忌まわしくも残る痕。

白い首筋が、小動物のように愛くるしく上下する――吸い付きたい衝動が襲ってくる。
所有の証。
私のものだという、新たな焼き印として――いや、それだけでは足りない。
突き動かしてくるような熱い衝動に駆られる。
鼓水の身体の隅々まで私で満たして、私だけのものにしてしまいたい。

まるで獣だ。

神でありながら、私は獣に堕ちてしまった。

こんな浅ましい姿に貶める感情の正体を、私は知っている。

嫉妬。

そんな低俗な感情は、神である私は無関係だと思っていた。

鼓水と出会うまでは。

何もかも鼓水に出会って変わって行く。
恐ろしいくらいに。

これが愛というものなのか。
鼓水への愛を深めるたびに、私はどこまで堕ちていってしまうのだろう――。

白い首筋に口付けようと身を屈めた私は、瞬時に目を見張った。

鼓水が顔を横に向けたまま、静かに泣いていた。