私の力を使わずどうやって地上に戻ったかは分からないが、鼓水がそこにいた。
一人ではなかった。
男と向かい合っていた。
その男を私は凝視する。
以前像の前に立って涙を流していた男――鼓水が気にかけていた男だった。

『俺は信じない。人間が龍神の妻になれるわけないだろ？』

男は鼓水の肩を掴み、強引に抱き寄せた。

『鼓水を失うなんて嫌だ……！　やっと再会できたのに』

鼓水の目からは涙が流れていた。
抱き締められたまま黙りこくるその顔は悲嘆にくれている。

『やっと再会できた』

その言葉から察するに、鼓水と男は旧知の仲なのだろう。
しかも、ただの友人程度ではない、深い絆を共有する関係の――。

燿興の言葉が脳裏に甦る。
それと同時に、頭が真っ白になるような感情の昂りを感じた。

鼓水を離さない。
鼓水は私だけのものだ。