それ以降、不思議と心が散漫になった。
一日の中には天界に関する執務に当てる時間があるが、鼓水のことが気になってまったく集中できない。
億劫な仕事がさらに煩わしく感じた。

鼓水はいったいどうしたのだろう。
何かを抱えこんでいるかのようなあの硬い表情が気になって仕方が無かった。

鼓水と話したい。
触れたい。
抱きしめたい――この腕の中に、しかと。

「鼓水」

仕事など放っておいて、たまに鼓水と湖の外でも出てみようか。
そう思い立って呼んだが、いつもは数秒で駆けつけてくる鼓水がいっこうに姿を見せない。
屋敷の中にいるのなら、気で鼓水を感じることができるが、全く感じない。

水鏡を作った。
何故そう思ったか理由は分からないが、作った早々映し出すように念じたのは、あの像が立っている場所だった。

果たして、私の勘は当たった。