それから、鼓水が何かに想いを馳せるかのようにぼうっとすることが多くなったと気付くのには、時間がかからなかった。

まさにうわの空だ。

屋敷から湖面――空を見つめては、時折溜息まで零している。

「……もしや、里が恋しくなってきたのでは?」

鼓水に直接質す気にはなれず、かといって見過ごすこともできず、つい、燿興に漏らしてみた。
すると、一瞬あんぐりと口を開けた妙な表情をしたものの、燿興はすぐに真面目な顔で推測して、

「里に忘れられない人物でも残してきたのでしょうか」

と思案深げな声で続けた。

「想いを残してきた男がいると?」
「いえ兄者、そういう意味ではなく――」
「鼓水に限ってそんな!」

私は一笑に付した。
普段から私に寄せてくれている鼓水の想いに嘘偽りなどあるはずがない――。

不意に、脳裏に先日水鏡に映った男を見た時の鼓水の様子を思い出した。

なんだ……?
この妙な胸のもやつきは?