「俺はこの大和をもっと大きく強力な国にしたい。それができるのは今は自分だけだ。市辺皇子(いちのへのおうじ)、根の優しいお前ではまず無理だ!」

大泊瀬皇子(おおはつせのおうじ)は今まで誰にも話さなかった本音を初めて吐き出した。自分は第5皇子で、本来なら大王など望めるものではなかった。

だが2人の兄に攻撃を仕掛けられた時に、2人の兄を殺してでも自分が大王になるべきだと彼は考えた。

市辺皇子の存在もあったが、皇女の母親を持つ自分の方が優位だったので、市辺皇子に手を出すつもりはなかった。

(それに、その為に韓媛(からひめ)を正妃にすることを一旦諦めたぐらいだ。自分が大王を望む限り、正妃は皇女じゃないと厳しいからな……)

市辺皇子もやっと大泊瀬皇子の本心を聞くことができて、やはり彼は今倒しておかないといけないと思った。

「もし今ここで俺がお前を倒せなかったら、きっとそれが俺の運命なのだろう。だが俺はその運命とやらに抗いたい」

そして市辺皇子は剣を再度強く握り、大泊瀬皇子に剣を仕掛けてきた。

大泊瀬皇子も身構えて、市辺皇子の剣を受け止める。


こうして次の大王の座を巡り、ついに大和の2人の皇子が激突することとなった。