「今回は大王への復讐だろう？妃なんて捕まえて、その彼女はどうするつもりだ」

「妃は俺が好きなようにするさ。最悪邪魔になれば殺してしまえば良いからな」

6年前もあの娘には少し興味があった。何分とても綺麗な娘なので、少し手を出してみたいと思った。

「まぁ、今回はお前に従う事にしてるから、その通りにはする。であれば、彼女らがどこに行くのかを見極めてから、近寄った方が良さそうだな」

大炯(でひょん)は嵯多彦(さたひこ)にそう提案した。
今はまだ宮から近いので、下手に動いたら宮の者達に気付かれてしまう可能性がある。

「でも、それならその妃以外はどうするんだ？全員殺すつもりか？」

「まぁ、そうだな。抵抗するようだったら、殺した方が良いだろ」

嵯多彦はそう言って、気味悪くニヤニヤしながら彼女達を見ていた。これで大王への復讐が1歩近づいて来た。

そんな嵯多彦の側に、もう1人の彼の同伴者がやってきた。

「嵯多彦様、瑞歯別大王(みずはわけのおおきみ)達の事ですが。先程の場所を出発して、この付近の村をゆっくり回りながら宮に戻ろうとしているみたいです」

「なる程。であればまだ暫くは宮に戻って来なそうだな」

嵯多彦はこの隙に、大王の妃を拐う事を決めた。
こちら側は自分を含めて5人、向こうは女達ばかりだから、簡単にはやれるだろうと思った。

それから嵯多彦は、佐由良(さゆら)たちに気付かれないようにしながら、彼女達の後を追った。