そして徒歩で向かった忍坂姫(おしさかのひめ)達は、やっとの事で、雄朝津間皇子(おあさづまのおうじ)達のいる場所まで辿り着いた。

(そう言えば、私大王とは初めてお会いするのよね。上手く挨拶出来れば良いけれど)

忍坂姫は、今まで噂でしか聞いた事のない瑞歯別大王(みずはわけのおおきみ)に会えるとの事で、少しだけ緊張していた。

彼女がふと遠くを見ると、雄朝津間皇子を発見した。そしてそのとなりには見知らぬ男性がいる。かなり身なりの良い服装を着ており、身長も雄朝津間皇子よりも少し高かった。

忍坂姫の手を繋いで一緒に歩いていた市辺皇子(いちのへのおうじ)は、その男性を見て言った。

「あ、大王が来てる!」

それを聞いた忍坂姫はさらに緊張してきた。

(あ、あの人が瑞歯別大王……)

するとそんな2人に雄朝津間皇子が気付いたらしく、こっちに来るよう手で振った。

そして忍坂姫と市辺皇子は瑞歯別大王の前までやって来た。

「大王、お久しぶりです」

市辺皇子はそう大王に挨拶した。

「あぁ、市辺。久しぶりだな、元気にしてたか」

そう言って彼は市辺皇子の頭を軽く撫でてやった。市辺皇子も大王に撫でられてご機嫌のようだ。

そして瑞歯別大王は、今度は忍坂姫の方を見た。

「雄朝津間、この子が忍坂姫か」

大王は横にいる雄朝津間皇子に聞いた。彼自身も忍坂姫と直接会うのは初めてだった。
雄朝津間皇子と忍坂姫が昔1回会った時の事は聞いていたが、その時、瑞歯別大王はその場にはいなかったのだ。

「あぁ、そうだよ」

雄朝津間皇子は、ボソッと言った。
彼女が思うに、何故か彼は少し面倒臭そうな表情をしていた。

「瑞歯別大王、どうも始めまして。稚野毛皇子(わかぬけのおうじ)の娘の忍坂姫です。この度はお会い出来てとても光栄です」

そう言って忍坂姫は軽く頭を下げた。

「いやいや、こちらこそ。今回は宮までこさせる形になって本当に済まない。雄朝津間皇子の相手は何かと大変だろう」

瑞歯別大王はとても気さくに忍坂姫に話しかけてきた。

「いえ、そんな滅相もない。雄朝津間皇子には色々とお世話になってます……」

忍坂姫はそう言うと、初めて瑞歯別大王をまじまじと見た。
彼は背も高くてとても凛々しい。そして何より本当に綺麗な顔立ちをしていた。これは年頃の娘達が騒ぎ立てる訳だ。

(これは噂以上だわ......なんて素敵な方なんでしょう。何かドキドキしてくる)

そんな大王を目の前にして、忍坂姫もすっかり彼に見入ってしまった。

雄朝津間皇子はそんな彼女の状態に気が付いたみたいで、少しため息をついた。

(やっぱりな。この子が兄上を見たら何かこうなるような気がしてたんだよ)