それから皇子は宮内を歩いていた。
「とにかく、明日にでも物部伊莒弗の元に行ってみるか。それより先に雄朝津間に会うか……いや、今は佐由良に会う事の方が先だ」
その時ふと、初めて佐由良に会った時の事を思い出した。
(俺は、元々吉備が嫌いだった。子供の時、母上はいつも泣きながら俺に言った。
大王はどうしてあの娘の元へばかり行ってしまうのかと。
だから俺は言った、自分がそばにいるから悲しまないでと。
ただどれだけ俺がそう言っても、母上の悲しみを癒やす事は出来なかった。
そしてそんな母上は結局その悲しみを抱いたまま亡くなってしまった。
そしてそれから1年後、俺は佐由良と出会った。
その頃はもう俺も小さな子供ではなかったし、父上の事情も理解していた。
ただそれでも、やっぱり吉備の姫と聞いて怒りを抑える事が出来なかった)
「そんな状態だったのに、まさかその吉備の姫に恋するようになるとは、何とも皮肉だな」
ふと皇子はそんな事を思い返していた。
「とにかく、明日にでも物部伊莒弗の元に行ってみるか。それより先に雄朝津間に会うか……いや、今は佐由良に会う事の方が先だ」
その時ふと、初めて佐由良に会った時の事を思い出した。
(俺は、元々吉備が嫌いだった。子供の時、母上はいつも泣きながら俺に言った。
大王はどうしてあの娘の元へばかり行ってしまうのかと。
だから俺は言った、自分がそばにいるから悲しまないでと。
ただどれだけ俺がそう言っても、母上の悲しみを癒やす事は出来なかった。
そしてそんな母上は結局その悲しみを抱いたまま亡くなってしまった。
そしてそれから1年後、俺は佐由良と出会った。
その頃はもう俺も小さな子供ではなかったし、父上の事情も理解していた。
ただそれでも、やっぱり吉備の姫と聞いて怒りを抑える事が出来なかった)
「そんな状態だったのに、まさかその吉備の姫に恋するようになるとは、何とも皮肉だな」
ふと皇子はそんな事を思い返していた。