それから2人は、どちらから話す訳でもなく、そのまま伊莒弗(いこふつ)の所に戻って来た。
 
「今日は朝からずっと馬で走り続けてお疲れでしょう。今日は是非泊まっていって下さい」

(そう言って貰えて、本当に助かるわ)
 
 佐由良はそれを聞いて本当に有難いと思う。今日はとにかくいろんな事があり過ぎて、本当にクタクタの状態だ。

「あぁ、そうさせてもらえると有り難い」

 瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)が彼に答えた。


 すると、それを聞いた伊莒弗が続けて言った。

「所で、皇子達の部屋の方ですが。一緒の部屋の方が良いですか」


「あぁ、部屋か。それは一緒で構わ……」

「それは分けてください!!!」

 佐由良が思わず叫んだ。

(何、何だと!)

「皇子、佐由良がそう言ってますが、どうされますか?」

 佐由良はすがりつくような目で皇子を見た。

(同じ部屋なんて絶対無理)

 そんな様子の佐由良を見た皇子は、頭をクシャとかいて言った。

「分かった...部屋は分けてくれ」

 彼の顔は少し赤くなっていた。

 そんな2人を伊莒弗は興味深く見ていた。

(こんな皇子の顔は初めて見たな。これは前途多難だ)
 
「では食事は私も含めて一緒に食べて、その後寝る時は分けますね」

 そう言って、伊莒弗は2人を食事の席に案内した。その後は近状の事や昔の事などを楽しく語らい、それから2人は寝床ろに入った。


「それにしても佐由良のやつ。わざわざここまで連れて来てやったのに」

 彼には2人っきりになってから言いたい事もあった。だが一旦歯止めが切れたら、恐らく彼女を押し倒していただろう。

「まぁ、今日は色々あり過ぎたからゆっくり寝かせてやるべきか」

 そう言いながら、彼は眠りについた。