「確かに物は良いみたいだけど、そんなに珍しい物ではなさそうね……」

 佐由良は再度その首飾りを眺めて言った。

「とりあえず、それは貴方に持たせるわ。麻日売(あさひめ)の形見だと思って」

「そうね、お母様の形見なんて無いと思っていたし。これは頂いていきます」

 そもそも、母の顔すら覚えていない有り様で、懐かしさとか母のぬくもりなども知らずに育ったのである。
 でもそう言ったものに憧れはが無かった訳では無い。やはり母親と言う存在を恋しく思っていた。

「じゃあ、佐由良気をつけて帰るのよ」

 黒日売は心配そうに佐由良を見送った。

「ええ、叔母様本当に今日は有り難う」

 そう言って佐由良は黒日売の元を離れ、自分の家へと向かった。