「これは、物部伊莒弗(もののべのいこふつ)に直接会って聞いてみるしかないな」

 うーんと瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)は唸った。

「皇子は、その方にお会いする事が出来るんですね」

「当たり前だ!佐由良、俺を誰だと思ってるんだ」

「そ、そうですよね。失礼しました……」

 今回の光景が何なのかを突き止めるには、その人に会って確認するしかない。

「今回は未来の光景ではなく、過去のものだったって事ですねか」

「あぁ、そのようだな」

(一体先程の2人は、どうしてあんな所で会っていたのかしら。)

「とにかく、今は捕まった女達を助け出すのが先決だ」

 瑞歯別皇子はそう言って、アジトの方を見た。特に大きな動きはないようだ。


 すると、後ろから「貴様ら何者だ!」と声がした。

 何と佐由良達の後ろから、奴らの仲間の一人が来ていたらしい。

(し、しまった!)

「おい、皆。誰かが俺達を見張っていたぞ!」

 すると何人もの男達が佐由良達の周りにやって来た。
 思わず瑞歯別皇子は佐由良を後ろに隠した。

「えらく、身分の良さそうな服を来た奴らだな。ここで何をしている」

「お前達こそ、若い娘達をさらってどうするつもりだ」

 それを聞いた男達はケラケラ笑いだした。

「あぁ、あの女達は、隣の半島の国に売り飛ばすつもりさ。向こうは内戦が続いていて、とても荒れている。そこの気が立っている連中に売ろうって訳さ」

「何、この国ではなく他国に売るつもりか」

 するとそのケラケラ笑ってる男の1人が、佐由良を見た。

「それにしてもあんたが後ろに隠してる娘、やけに綺麗な女だな。そいつも一緒に捕まえるか」

 それを聞いた佐由良は恐ろしくなり、ブルブルと震えた。

「おい、そこのガキ。その女を渡してくれたら助けてやっても良いぞ。どうせその腰に付けてる剣も飾り物だろうよ」

(何、何だと!)

 それを聞いた瑞歯別皇子は、一瞬で怒りを顕にした。そして彼は腰から剣をスパッと抜いた。 

 それを見た、男達は一瞬怯んだ。