(今の光景は何だったのだろう。これもやっぱり勾玉の首飾りが見せてるの?)

 佐由良がふと前を見ると瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)がとても驚いた表情をしていた。

「何だ今の現象は」

「え、今の現象って、まさか皇子も見えたんですか!」

 佐由良は驚いた。

「あぁ、若い男女がいて、女の方は佐由良にとても良く似ていた」

(やっぱり、私が見たものと一緒だ)

 佐由良はとっさに勾玉の首飾りを、取り出した。

 瑞歯別皇子はそれを見て驚いた。

「これはさっき見たものと全く同じもの。一体どういう事だ」

「これは、私の母の形見の首飾りです。それと先程の光景で写っていた場所は吉備の海部だと思います」

 佐由良はそこで瑞歯別皇子に、この勾玉の首飾りを貰った経緯や、今までに見た現象の内容を伝えた。

 その話しを信じられないと言った感じで、瑞歯別皇子は聞いていた。

「まさか、そんな事が起こるなんて」

 瑞歯別皇子はまじまじと佐由良の持っている勾玉の首飾りを見た。
 勾玉の首飾り自体は、特に異変は感じられない。

「光景に出ていた私に似た人は、もしかして私のお母様?」

 佐由良はその自分に似た女性が、何となく亡くなった自分の母親のような気がした。

「確かに、あれだけお前に似ているんだ。その可能はあるな。それと女と一緒にいた男、誰かに似ていたな」

「え、皇子本当ですか?」

 瑞歯別皇子は「誰だったか...」と考え出した。
 
「そう言えば、手に変わった傷がありましたね。まるで刃物で切られたかのような」

「刃物で切られたかのような傷跡...あ、そうか思い出した!」

(え、本当に)

「あいつは、物部伊莒弗(もののべのいこふつ)

「え、物部?」

「あぁ、間違いない。今よりも大分若かったから、直ぐには気付かなかった。あれは物部伊莒弗だ。物部の実力者で、今は去来穂別大王(いざほわけのおおきみ)の補佐をしている」

(そんな人がどうして、私の母に会ってるの)