「とりあえず、僕しばらくこの宮にいる事にしたので、佐由良も宜しくね」

「は、はい。こちらこそ皇子にご不便にならぬよう、精一杯お仕えさせて頂きます」

 それを聞いた雄朝津間皇子はちょっと不満げにして言った。

「うーん、僕的にはどちらかと言うと友達的な感じが良いんだけど」

「おい、雄朝津間(おあさづま)。佐由良は采女としてこの宮にいるんだ、余計な事はするな!」

 瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)が思わず横から口を挟んだ。彼からすると、どうもこの弟皇子の発言は気に入らないようだ。

「えー、良いじゃない。ちょっと話しをするぐらい。別に兄上の妃でもないんだからさ」

 雄朝津間皇子は少し不服そうにしながら言った。

「き、妃って……別に俺はそんな事を言ってるんじゃない。とにかくこの宮にいる間はややこしい事はするな。分かったな!!」

 瑞歯別皇子は雄朝津間皇子にきつく言った。彼はどういうわけか、弟皇子にそう言われてしまい、本人的にも少し動揺が出ているみたいだ。

「もう、そんな言い方しなくても良いのに」

 雄朝津間皇子は少しムクッとしてしまった。 


 横でその状況を見ていた佐由良は、この弟皇子が少し可哀想に思えた。
 
「瑞歯別皇子、私は雄朝津間皇子とは歳が近いのできっと話しやすいんだと思います。采女の役目もしっかりさせて頂き、瑞歯別皇子にも迷惑はかけませんので安心して下さい」

 それを聞いた瑞歯別皇子は「はぁー、もう良い。好きにしろ」と言って渋々了承した。

(最近の瑞歯別皇子はちょっと変わられたみたい。以前ならこんな事に突っかかってなんて来なかったのに)

 その後佐由良は自分の仕事に戻る為、部屋を出て行った。