その後佐由良が無事に回復して、今日から仕事を再開出来る事となった。

 そして彼女の希望通り、瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)と会える事になった。だが前回の件があったので、彼女は護衛の人に付き添われて皇子の元に行った。


「瑞歯別皇子、佐由良です。中に入っても良いでしょうか」

「あぁ、中に入りなさい」

 そう言われ、佐由奈良は中に入った。部屋の中では、瑞歯別皇子が彼女が来るのを待っていたようだ。

 皇子の前まで行くと、彼女は頭を下げてその場に座った。

「瑞歯別皇子、この度はご迷惑をおかけして、本当に済みませんでした」

「挨拶は良いから、顔を上げなさい」

 佐由良は、皇子にそう言われて頭を上げた。

 瑞歯別皇子は、佐由良の顔を見て安心の表情を見せた。

「今回は本当に申し訳ない事をした。お前には心と体に大変大きな傷を付けてしまった……」

(皇子、本当に私の事心配されてたのね)

「そんな、滅相もございません。むしろ皇子が無事で本当に良かったです」


 瑞歯別皇子はそんな彼女を見て、何かを決めたかのように話した。

「それで、今回の事を受けてだが。吉備の姫をこれ以上こんな目に合わせる訳にはいかない。よってそなたを吉備に送り返そうかと思う」

(え、私を吉備に)

 それを聞いた佐由良は、思わず固まった。

(あの吉備海部にまた戻れる。でも戻ってもそこには自分の居場所は……)

 すると、彼女は慌てて皇子に言った。

「皇子、申し訳ございません!!私はここ大和に残りたいです。今吉備に戻った所で、あそこに私の居場所はありません。引き続きこの宮で皇子にお仕えさせて下さい。それに今回の件、そもそもは私にも落ち度があった事ですし」