次の日は、皆収穫祭の準備で大忙しだった。

 佐由良は、皇子に出す食事の準備の手伝いをしていた。料理は他の者が作るが、料理を並べて運ぶのは佐由良達の担当である。

 そしてその後、数名で料理を運びに行ったが、瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)は相変わらず無愛想のままだった。

(とりあえず、今後は今まで以上に皇子には関わらないようにしないと。どこでまた皇子の逆鱗に触れるか分からない……)

 そして采女の女達は、料理を置くとそのまま部屋を後にした。

 その後、佐由良も他の女達に付いて歩いていると、彼女は後から来た見張りの男に呼び止められた。

(余り見かけない人ね)

「皇子がお前に部屋に戻って来て欲しいと仰せだ」

(皇子が一体何の用かしら?)

「分かりました。では行ってきます」

(もしかして、先日の事でまた何か怒られるのかしら……)

 そんな不安をよそに、佐由良は皇子の部屋へと向かった。


 そして皇子の部屋の近くまで来た時だった。急に後ろから誰かに捕まえられた。

(え、何?)

 佐由が慌てて後ろを振り返ると、相手は嵯多彦(さたひこ)であった。

「え、何をしてるんですか!」

 佐由良が離れようとするが、力が強すぎて嵯多彦から離れる事が出来ない。

(駄目だわ、彼から逃げれない)

「やっぱりあんた美人だから。手に入れておこうと思ってね。まだ皇子には手をつけられてなさそうだ」

 嵯多彦はそう言って、佐由良の首筋に口を当てた。

 その瞬間、佐由良の体に物凄い嫌悪感が走った。だがどうしても彼から離れる事が出来ない。

「それに今日は収穫祭の準備で皆忙しく手薄状態。さらに念の為に俺の連れには、ここに誰も近寄らせないよう手を打たせてある」

(な、何て事を)

「皇子はこの向こうにいるんだ。今この場面を見られたらさすがに疑われる。釆女(いなめ)が他の男と通じてるとなると、さすがにあんたも、ただでは済まされないさ」

(そ、そんな事って)

 嵯多彦はさらに佐由良の体を触り出した。

「お、お願いやめて……」

 そして服の中にまで手を入れてき出した。するとさすがに佐由良耐えきれなくなり、その場で叫んだ。

「嫌ー、誰かーー!!」