次の日、阿止里《あとり》達は少し馬を走らせて、回りの村を見に回ったみたいだった。

瑞歯別皇子《みずはわけのおうじ》は部屋で仕事に追われてるとの事だったので、佐由良も皇子が仕事が終わった頃に話しに行こうかなと思っていた。

「ただ、どうやって瑞歯別皇子のご機嫌を取ったら良いんだろ?皇子が喜びそうな事ってあるかしら?」

とりあえず佐由良は、仕事をしながら考えていたが、一向に良い考えが浮かんで来なかった。

そしてそろそろ瑞歯別皇子の仕事が終わる頃合いになっていた。

佐由良は悶々と考えながら宮の中を歩いていた。

「あぁ、駄目だ。やっぱり思いつかないわ。人の機嫌の取り方なんてあるのかしら?」

そんな事を言いながら歩いていた為、前から人が来ている事に全く気が付かなかった。
そして前の人と彼女は思いっきりぶつかってしまった。

「い、痛!」

佐由良は慌てて前を向いた、するとそこには瑞歯別皇子本人が立っていた。

「お、皇子、すみません。ちょっと考え事をしていまして」

「佐由良、お願いだからちゃんと前を向いて歩いてくれよ。あ、今ちょっと壁に頭をぶつけてしまったな」

瑞歯別皇子は頭を少し抑えていた。結構勢い良く壁にぶつけてしまったらしい。

それを見た佐由良は、慌てて皇子を少しそこから離れた場所に移動して、頭を見てみた。

頭の所が少し赤くはなっているが、出血はしてなさそうだ。
それを見て彼女は安心した。

「お、皇子、本当に済みません!まだ痛みますか?」

佐由良は必死で皇子の頭の傷を見ていた。すると2人が余りに距離が近くなっている事に気が付いて、彼女は思わず『はっ!』とした。
それで慌てて皇子から離れようとしたが、彼が彼女手を掴んで自分に引き寄せた。

「佐由良、そんな慌てて離れる事はないだろう?」

「ち、ちょっと皇子この場所では……」

佐由良がそう言おうとしたら、彼女の唇は皇子の唇によって塞がれた。