それを聞いて佐由良も思った。
確かに今日の阿止里《あとり》の態度は、ちょっと行き過ぎている感じがした。
それに不満を覚えたから、瑞歯別皇子《みずはわけのおうじ》は宴の席で愛想が悪かったのかもしれない。
そして確かに瑞歯別皇子はちょっと嫉妬深い所がある。

「稚田彦《わかたひこ》様、分かりました。私の方で何とか皇子の機嫌を取ってみる事にします」

「あぁ、そうしてくれると大変助かる。相手は吉備からの訪問者だ。粗相があってはならないからね」

そこまで言うと稚田彦もちょっと肩の荷が降りたのか、少しホッとしたような表情を見せた。

(稚田彦様も色々と大変なのね)

そして余り長く2人きりになってはいけないと思い、そのまま佐由良は急いで部屋に戻っていった。