それからしばらくしたのち、急に蝦夷が起き上がってきた。
「よし、そろそろ小墾田宮に戻るとするか!」
どうやら彼もかなりくつろいでいたようで、横にいる稚沙に、思わず大きく背伸びをして見せる。
そして2人がふと周りを見渡せば、辺りはすでに夕方になりかけている。どうやら思っていたよりも時間がわりと経過していたみたいだ。
「あら?意外と長くここにいたみたい」
稚沙は部屋に置いてきてしまった仕事を思いだし、本当に大丈夫だろうかとふと不安がよぎる。
たが今日は大方仕事を済ませてきているので、そこまで負担になることはないだろ。
「あぁ、仕事の心配だろ?それならさっきもいったように、俺が上手く事情を説明してやるから大丈夫だって」
「うーん、そうだと良いんだけど……」
とりあえずこのことに関しては、彼を信用する他ない。
こうして2人はふたたび馬に乗ると、急いで小墾田宮に戻ることにした。
そして彼らが小墾田宮の厩まで戻ってくると、何故だが椋毘登がそこで待ち構えているのが見えた。
「おおー!椋毘登。よく俺がここに来ると分かったな!」
蝦夷は彼にそういって馬から降りる。
そしてさらに稚沙を手伝って、彼女も馬から降してくれた。
「お前が馬で外に走りに行ったと聞いたからな。でもまさか稚沙まで連れていってたのは本当に意外だったよ」
椋毘登はそういって稚沙の方に目をやった。
稚沙も、何故だか彼はすこし機嫌が悪そうに思えた。
「元々この馬が暴れ出して手に負えない状態だったんだが、それを彼女が上手く落ち着かせてくれたんだ。彼女馬の扱いには相当慣れてるようだ」
蝦夷は少し愉快そうにしてそう答える。彼的に、稚沙との馬乗りは相当楽しかったようだ。
「それで?そのまま2人して、外に馬を走らせに行ったと?」
だが椋毘登の方は底声で、そっけなくしていった。
(うーん、蝦夷と勝手に出掛けたのがまずかったのかな?でもそれを椋毘登に責められる筋合いは全くないし……)
稚沙はどうして彼が、少し怒ってるような表情をするのか、その理由が良く分からない。
「とりあえず、お前の仕事が終わる頃までには戻って来たんだから、良いじゃないか!」
蝦夷の方は、そんな不機嫌そうにする椋毘登のことなど、全く気にしていない様子だ。
「じゃあ俺はこいつを一旦厩に戻して、それからちょっと庁に寄ってくる。その際に一緒に稚沙を連れ出した件の説明をしてくるよ」
(あー良かった。そのことはちゃんと説明してくれみたい)
稚沙もそれを聞いてとても安心した。このまま戻れば、他の女官達に確実に叱られてしまうだろう。
そして彼は稚沙に対してもいった。
「稚沙、今日は本当に楽しめて良かったよ。付き合ってくれて有難うな!」
「私の方こそ、久々に馬に乗れて凄く楽しかったわ」
稚沙は蝦夷に対して思わず笑って答えた。
彼はとても気さくな性格だ。それに話しもしやすい。稚沙は彼と知り合えて、本当に良かったと思った。
「じゃあ、ちょっと庁に行ってくる!」
蝦夷はそういってその場を離れていった。
(初めは蘇我馬子の息子だと思って、少し心配だったけど、割りと良い人そう)
稚沙は、本来の目的である厩戸皇子を探すことは出来なかったが、代わりに良い気分転換ができたので、これはこれで良かったと思った。
「蝦夷とは、えらく仲良くなったんだな」
それを聞いて稚沙は思わずハッとする。彼女は側にいた椋毘登のことをすっかり忘れていた。
「そ、そうね。わりと話のしやすい人だったから。ついつい楽しくなって」
「ふーん、そう……」
(あれ?何かちょっと気まずい空気が流れてない?)
「よし、そろそろ小墾田宮に戻るとするか!」
どうやら彼もかなりくつろいでいたようで、横にいる稚沙に、思わず大きく背伸びをして見せる。
そして2人がふと周りを見渡せば、辺りはすでに夕方になりかけている。どうやら思っていたよりも時間がわりと経過していたみたいだ。
「あら?意外と長くここにいたみたい」
稚沙は部屋に置いてきてしまった仕事を思いだし、本当に大丈夫だろうかとふと不安がよぎる。
たが今日は大方仕事を済ませてきているので、そこまで負担になることはないだろ。
「あぁ、仕事の心配だろ?それならさっきもいったように、俺が上手く事情を説明してやるから大丈夫だって」
「うーん、そうだと良いんだけど……」
とりあえずこのことに関しては、彼を信用する他ない。
こうして2人はふたたび馬に乗ると、急いで小墾田宮に戻ることにした。
そして彼らが小墾田宮の厩まで戻ってくると、何故だが椋毘登がそこで待ち構えているのが見えた。
「おおー!椋毘登。よく俺がここに来ると分かったな!」
蝦夷は彼にそういって馬から降りる。
そしてさらに稚沙を手伝って、彼女も馬から降してくれた。
「お前が馬で外に走りに行ったと聞いたからな。でもまさか稚沙まで連れていってたのは本当に意外だったよ」
椋毘登はそういって稚沙の方に目をやった。
稚沙も、何故だか彼はすこし機嫌が悪そうに思えた。
「元々この馬が暴れ出して手に負えない状態だったんだが、それを彼女が上手く落ち着かせてくれたんだ。彼女馬の扱いには相当慣れてるようだ」
蝦夷は少し愉快そうにしてそう答える。彼的に、稚沙との馬乗りは相当楽しかったようだ。
「それで?そのまま2人して、外に馬を走らせに行ったと?」
だが椋毘登の方は底声で、そっけなくしていった。
(うーん、蝦夷と勝手に出掛けたのがまずかったのかな?でもそれを椋毘登に責められる筋合いは全くないし……)
稚沙はどうして彼が、少し怒ってるような表情をするのか、その理由が良く分からない。
「とりあえず、お前の仕事が終わる頃までには戻って来たんだから、良いじゃないか!」
蝦夷の方は、そんな不機嫌そうにする椋毘登のことなど、全く気にしていない様子だ。
「じゃあ俺はこいつを一旦厩に戻して、それからちょっと庁に寄ってくる。その際に一緒に稚沙を連れ出した件の説明をしてくるよ」
(あー良かった。そのことはちゃんと説明してくれみたい)
稚沙もそれを聞いてとても安心した。このまま戻れば、他の女官達に確実に叱られてしまうだろう。
そして彼は稚沙に対してもいった。
「稚沙、今日は本当に楽しめて良かったよ。付き合ってくれて有難うな!」
「私の方こそ、久々に馬に乗れて凄く楽しかったわ」
稚沙は蝦夷に対して思わず笑って答えた。
彼はとても気さくな性格だ。それに話しもしやすい。稚沙は彼と知り合えて、本当に良かったと思った。
「じゃあ、ちょっと庁に行ってくる!」
蝦夷はそういってその場を離れていった。
(初めは蘇我馬子の息子だと思って、少し心配だったけど、割りと良い人そう)
稚沙は、本来の目的である厩戸皇子を探すことは出来なかったが、代わりに良い気分転換ができたので、これはこれで良かったと思った。
「蝦夷とは、えらく仲良くなったんだな」
それを聞いて稚沙は思わずハッとする。彼女は側にいた椋毘登のことをすっかり忘れていた。
「そ、そうね。わりと話のしやすい人だったから。ついつい楽しくなって」
「ふーん、そう……」
(あれ?何かちょっと気まずい空気が流れてない?)