「今日仮眠してたら、なんか金縛りに遭ってさ」

「金縛りぃ?」

 現実的な話からいきなりオカルトに吹っ飛んだ。
 きっとこれが普段の俺なら動画サイトのコメントのごとく「何ゲー?」とか言っちゃうところだった。
 けれど父の真剣な表情と、今日の俺の奇妙な出来事を考えると、今ここで茶化すべきではないと思った俺は、ただ父の話の続きを待った。

「目を開けるとさ、なんとそこに母さんがいたわけ。鬼のような顔で。いやあおっかなかったな」

「母さんって、死んだ母さん?」

「当たり前だろ。他にお前の母さんが居るもんか。それでだ……」

 どうも父は死んだ自分の妻の幽霊に馬乗りにされて、くどくどとお説教をされたとか。

「何で私の代わりに息子を護ってくれないのよ」

「放置プレイすんなバカヤロー」

「本当なら私に似て可愛いはずなのに親父熊のような残念な事になったらどう責任取ってくれるのよー」

 とか……父が寝起きで覚えている限り、そんな罵詈雑言を浴びせられたそうな。
 で、仕事に戻ったところ、何故か今日はシフトに入ってないはずの社員が間違えて出勤したのを知り、自分が自宅に帰る代わりに働いてもらう事をその社員にお願いし、急いで家に帰ってきた……との事だ。

「母さん怒ると怖くてな……」

「いや、それ以前に本来気にしなきゃいけないところあるんじゃないか?母さんの幽霊って本当なのか?父さんの単なる夢じゃ……」

「でも、父さん……放置プレイなんて言葉聞いたことなかったからな。夢の中で知らない単語出てくるなんてありえないだろ?」

 確かに夢というのは自分の脳に与えられた情報から生み出される訳で。
 ……ん?放置プレイ?