そんな話を、俊允さんの家の居間で、畳の上に並んで寝転がりながらした。

 古道具屋の仕事は多忙ではなく、たまに来るお客さんから買い取りをしたり接客をして販売したり。掃除や商品の手入れをしたり。ご近所さんがお裾分けを持って来て、しばらく話し込んでいることもある。ご近所さんは、突然店に出入りするようになったわたしを見て「あの俊允ちゃんが彼女を連れ込んだはる!」と次々に見物にやって来て、俊允さんは「騒がんといて!」と困り顔だった。


 そんな俊允さんは、お祖父さんから引き継いだというこの店を、無くしたくないのだと言う。いくつもの時代を生きてきた道具には、その道具を使った人たちの想いが詰まっている。それを手離したとしても、必要としている人の手に渡っていく。その様子が好きなのだと言う。

 確かにそうだと思った。想いは時を越える。百六十年近く前に、前世の俊允さんから前世のわたしへ、前世のわたしから揚屋のご主人に、そのご主人から長い時を経てわたしの手に渡り、俊允さんとわたしが出会うきっかけになった。

 たくさん回り道をしたけれど、悲しい結末を迎えてしまったふたりも、喜んでいるだろうか。

 考えていたら、こんな夢を見た。俊允さんにそっくりな髷の男性と、わたしにそっくりな煌びやかな着物の女性が、寄り添って笑っていた。

『えろう、遅なってしもて……』
『ええよ、ちょっとの間あんさんと会えへんかっただけ。なんべんか、あんさんが恋しくて仕方なかっただけや』
『この期に及んでいけずや!』
『いけずはあんさんの方や、あないに僕を往生させて』
『それは……堪忍しておくれやす……』
『ほな、そのかいらしい顔をよく見して、好きやと言うてください。来世で会えて嬉しいと、来世でも会いたかったと、あのとき言うてくれへんかったことを、言うてください』
『やっぱりいけずや……』
『しゃあけど僕は、あんさんを往生させたいんや』
『ほんに、わての恋しい人はなんぎやなあ……』