「てゆうかさ、その笑顔、本当ムカつく!なんで、ずっと笑ってられんの?ムカつかない訳?恵子にも、絵梨子にも、アタシにも」

美咲が、何を言っているのか、私にはよく分からない。

ーーーーただ、私の心には何も響かない。だから、つい意味もなく笑ってしまうのだ。

美咲が心配してくれることが嬉しくて、友達の少ない私が、友達の多い美咲と一緒にカフェに行けることが、ワクワクして楽しくて、私が、怪我をしたり、嫌がらせされる度に、怒ってくれる美咲に嬉しくて、涙が出そうになってくる。

「心配してくれてありがとうね、美咲」

にこりと微笑むと美咲は、怖い顔をしながら、席を立ち、カフェから出て行った。

「はぁ……」

私は、また、美咲を不愉快にさせてしまったようだ。

私は他人から見たら、欲しがるモノ全てを持っているという自負がある。でも、嫉妬もやっかみも逆恨みも全く気にならない。

それはきっと、たった一つだけ、私には無いモノがあるから。どんなに経験してみたくても、欲しくても、手にできないもの。


ーーーーそれは『怒りの感情』