「日照りが続いたのは悪かったな。何せおまえ達のことなど微塵も興味が無いものでな」

冷ややかな青い目に、嫌悪感を滲ませて水神様は続けた。

「人間など妬み合って殺し合いを繰り返す愚かな者ばかりだ。自分のことだけしか考えていない。差し詰め、おまえも生贄として無理矢理連れてこられたのだろう?」
「……いえ、私は生贄になることを自ら望んで来たのです」

青い目に、微かに光が差したように見えた。

「おまえは自らが犠牲になることを厭わないのか」
「はい。……だって、誰かが名乗らないと村が……」

脳裏に、一人残した幼い弟の苦悶に歪んだ顔が浮かんだ。

「私の幼い弟も、飢えで苦しんでいるんです」

一瞬の沈黙の後、水神様は吐息して、しっしと手を振った。

「分かった分かった。すぐに湖の水を調整して、川の水を増やしてやる。あと天界に頼んで雨も降らせてやる。これでいいか」
「はい! ありがとうございます!」
「要が済んだのならさっさと帰れ。私は静かに書物を読んでいたいんだ」

言うなり水神様は書物の森の中にドカリと寝そべって、広げてあった書物を読み始めた。