長身に銀髪をなびかせたお姿は、この世のものとは思えぬほど神秘的で。
湖底を思わせる青い瞳は、その温度よりもなお冷たそうで――。
村のことしか知らない私は、その驚異的な神々しさに最初は言葉を失った。
でも、勇気を振り絞って訴えた。

「日照り続きのために私の村は飢饉に苦しんでおりまする。雨のお恵みを賜わるには、神様に生贄が必要と思い、こうして身を投じて参りました。さぁ水神様、どうぞ私を頭の先から足の先まで食ってくださいまし!」

一気に言い切った私を見下ろして、水神様はその端正なお顔に嫌悪感を滲ませた。

「生贄だと? 人間たちは未だにそんな愚習を信じているのか」
「え?」
「頭の先からばりばりだと? 私がそんな野蛮なことをするわけがなかろうが。帰れ小娘」

くるりと踵を返して、水神様は書物が山積みになっているお部屋に戻ろうとした。
けれども私は無我夢中で水神様が羽織っていた単衣の裾を掴んだ。

「どうか村をお助けください! どうか!」
「ええい離せ!」
「どうかお怒りをお鎮めください。私が何でもしますから」
「別に私は怒っておらぬ! 平穏に数千年を過ごしてきたのだ。おまえが来るまではな」
「お怒りだったわけではないと?」
「誰がいつ怒っていると言った。怒るとすれば、おまえがいつまでもその汚い手を退けないせいだ」

思わず私が裾を離すと、水神様は佇まいを改めて私を見下ろした。