けれども、透冴様は気にした様子もなく破顔した。
そして、ぎゅうと私を抱きしめた。

「では、ぽかぽかお日様そのもののような鼓水は、私に恋をしきっているということでいいな」
「ええええ」

真っ赤になる私に、透冴様はさらに笑った。

「実におもしろいものだな、恋をするというのは。実に胸躍るものだ」

不意に唇に感触を感じた。
目の前の瑠璃のような瞳を見て気付く。

透冴様に口付けされたのだと。

「では、こうして唇を寄せてしまいたくなるのも、お前に恋をしている証なのだな」

低く涼しげな声に微かな熱を宿して、透冴様はそう囁いた。

返事する代わりにうっとりと目を閉じて、私は再び下りてくる唇を受け入れた。

この地方に水の恩恵をもたらす水神様であらせられる透冴様は、幾千年の時を生きる博識で聡明な龍神様。

ですが、特に感情のこと――恋愛については例外。
だからこうして、私に『恋』について教えを請われます。

とても名誉あるお役目――ですけれども、貴方にずっと恋してきた身としては、それはとても甘くて、くすぐったくて――。