なだめるように私の頭を優しく撫でて、言い聞かせるように透冴様はゆっくりと続けた。

「確かに鼓水は面白くて興味深い。だがそれだけではない。鼓水といると、胸が温かくなるのだ。真っ白な心に鮮やかな色彩が広がって行くように、楽しく、快くなる。だから、そんなおまえがいなくなってしまうと……」

透冴様は今一度、強く私を抱き締めた。

「鼓水を失うことを想像すると、胸が張り裂けんばかりに痛む。もう十分だよ、こんな想いは。おまえが村に帰った後の二年間、ずっと感じ続けてきたのだからな。これが『寂しい』という感情か、と痛いほどに思い知ったよ」

私は思わず透冴様を見上げた。
そんな以前から、そのような想いを私に抱いてくださっていたなんて。
二年前の別れ際感じたあの思いは、私の思い違いではなかった……。