屋敷を飛び出して、涙を流しながらあてどもなくさまよった。
地上に出ようにも湖底から出る方法が分からなかった。

それにしても、薄暗かった。

今日の天気は曇りらしい。
そうなると、湖底のここにはいっそう光が届かず、森のように広がる藻のせいもあって、あたりはまるで夕刻のように暗い。

透冴様からは、屋敷の外を一人で出てはいけないと言われていた。
湖底には人間には知られていない獰猛な生物や妖が蠢いているから、と。

無我夢中で出て来たけれど、思い出してぞっとなった。

早く帰った方が身のためだ……。
そう思って来た道を戻ろうとしたところで、戦慄が走った。

薄闇の向こうに黒い影が眼を光らせていた。