「おい小娘!」
「は、はい!」

急に弟君様に呼ばれて、私は背筋を正した。

「妻だかなんだか知らんが、俺は今宵は兄者と飲むからな。酒と美味い肴を用意しろ!」
「は、はい!」
「おい、勝手に命じるな。鼓水は小間使いではないのだぞ」

睨む透冴様に私は笑顔を向けた。

「よいのです。透冴様の弟君様をおもてなしできて私も嬉しいです」
「そうか? すまないな。準備は簡単でいいからおまえも一緒に――」
「すぐに準備いたしますね! 失礼いたします!」

透冴様のお言葉を遮って、私は逃げるように屋敷に戻って行った。