そよ風が吹き、ぬけがけするように、すっきりとした輪郭にかかった銀髪を揺らした。

麗らかな日差しが暖かい。
でも長く風にあたっていては、お風邪をめしてしまうかもしれない。

私は羽織を持ってきて、懸けて差し上げようとした。
すると、透冴(とうご)様の目がゆっくりと開いて――水底を思わせるような美しい青い瞳と目が合った。

「はぁあ、申し訳ありません。起こしてしまいました……!」
「心地よくてすっかり寝入ってしまった。春だな」

透冴様は長い睫毛をさらさらと瞬かせ、涼しげなお声に眠気を滲ませて呟いた。
艶めいた吐息を漏らしながら気怠そうに身を起こすと、銀髪が肩から流れて、寛げた胸元からのぞく鎖骨に滑り落ちる。

はぁあ何という美しさ。
目の前でこんな奇跡を拝めるなんて、この世の幸せとはまさにこのことだわ……。