妻としての日々は、とても満ち足りていた。

「はぁああ」

今朝の透冴様の唇の柔らかさといったら、まるで菓子のよう――ううん、日本中の銘菓を集めたって、あんな甘い感触のものはないわ……。

思い出しては、ついついにやけてしまう。
今の私って、きっとどうしようもなく阿呆の顔をしているに違いない。

「はぁ……。私は三国一の幸せ者だわ……」

でも、幸せ過ぎて、不安になる。

人間の私が神である透冴様に娶られるなど。
それこそ三国くまなく探しても、けして見つかりそうにない奇跡だ。

だから、どうして不安になってしまう。

もしかしたら、透冴様が感じている感情と私のそれとは、違うのではないかと。

透冴様は恋愛を含め、人間が普段から抱く感情というものを、あまりご存じない。

それをいいことに、無意識に私は透冴様の心の機微を自分の都合のいいように解釈し、恋をしていると思い込ませているだけなのではないだろうか、と。