「もし、再びお会いする奇跡に預かれましたら」
「なんだと？」
「どうか私を妻にもらってくださいませんか？」

水神様の表情は固まっていた。
やっぱり、身の程をわきまえていないとお怒りに――？

けれども、それは一瞬のことだった。

「はぁ？」

水神様は奇麗なお顔を歪ませると、いつものぶっきらぼうな調子で言った。

「冗談はよせ。そんなこと、一生涯あるはずがなかろう。……さっさと帰れ」
「はい……！　どうぞお元気で！　水神様」
「……『水神様』ではない」

涙を堪えて笑った私を、水神様は真っ直ぐに見つめた。

「私にもちゃんとした名がある。透冴。それが、私の名だ」
「……まぁ」

なんて、綺麗なお名前。

透冴。

美しく聡明な水神様に相応しいその名を繰り返す胸の内に、悲しみが広がった。