私は笑顔を作って、ぺこりと水神様に頭を下げた。

「では私はこれにてお暇いたします。一週間お世話になりました。楽しかったです」
「遊びに来たのか、おまえは」

ほら早く帰れ、と言うや、水神様は水流を巻き起こし、湖面へ続く道を作った。

ここを通れば最後、もう一生水神様にお会いすることはないだろう。

堪らなく、胸が痛んだ。

これほどまでに寂しいと思う気持ち、きっ水神様は知るよしもないのだろう。
そう思うと余計に、切なさが増した。

私は、身の程をわきまえない愚か者だ。

人間の小娘の分際で、神様に恋をしてしまったのだから。

「あの……水神様」
「なんだ」

でも、愚か者でもいい。
初めて恋をした、美しくて尊い、誰よりもお優しい方。
きっと伝えても、この方ならぶっきらぼうに受け止めて、けしてお怒りはしないだろう。

「もし、私が大きくなって、もし……」

涙が出そう。
でも泣いては駄目だ。
水神様が唯一受け入れてくれた人間が最後に見せた表情が泣き顔だなんて、悲しすぎるもの。