いつも妹だけがいい思いをして生きている。

 双子なのに、どうして私だけが病気がちなのか。
 双子なのに、どうして私だけ両親に監視されているのか。
 双子なのに、どうして妹だけが自由なのか。
 双子なのに、どうして妹だけが世渡り上手なのか。

 生まれた瞬間からそれは運命づけられていたのか。
 どういう星の巡り合わせで、私が彼女よりも先にこの世の空気を吸うことになったのだろうか。
 双子座のポルックスとカストルがそれぞれ神の子、人の子として生まれてきたように、私たち姉妹も片方が神の子で片方が人の子なのだろうか。

 だとしたら、どっちが神の子でどっちが人の子なのだろうか。
 だとしたら、どっちが幸せなのだろうか。
 死ぬことのできない神の子と、死ぬことのできる人の子と――。

 いずれにせよ、双子の星は互いに運命の違いを嘆きながら生きていくしかないのだろう。





 妹が高校を卒業して大学近くに下宿し始めてから、ほとんど私たちは顔を合わさずに生きてきた。
――というのは嘘で、それ以前に実家で一つ屋根の下で暮らしていた頃から、私たちはほとんど疎遠な状態で生きてきた。

 多分、妹はこう思っていると思う。

『姉ばかり両親から愛されて、ずるい。私も誰かに愛されたかった』などと。

 何を贅沢なことを思っているんだ、と子供の頃から妹が疎ましかった。
 あんたは自由じゃないの。
 私は熱が出るたびに父と母がつきっきりで看病する。もう大丈夫だと強固に主張しても、それが受け入れられたことはない。

 学校を休みがちな子供だった。
 学校へ行くときには妹が、家で床に伏せっているときには母親が、というように、私の行動は常に誰かに見張られているような気がして苦痛だった。

 こういう親のことを巷では「ヘリコプター・ペアレント」と呼ぶらしいけれど、私が下す決定にはいつだって必ず父と母からの「余計な一言」が付く。

――テニス部? 炎天下のコートで何時間も過ごしていられないでしょ。

――海水浴? もし溺れたらどうするの! あんたが死んじゃったら、ママ生きていけない!

――大学? 家から通える大学にしておきなさい。

 そんな風に、私は何かを私の力で決められたことなどない。それは言い換えれば、自分で自分の人生を歩んでいないのと同じこと。

 その反動からか、私は自由な妹に八つ当たりを繰り返した。妹の前では、私は横暴になれた。つかの間の自由な時間。

――それ、あたしが食べたい。
――それ、あたしがほしい。

 そんな風にして妹からいろいろな物を取り上げてきた。

 同じように小学校で振る舞えば、どうなるか?
 もちろん、友達などできやしない。

 家でも学校でも話す相手は双子の妹。
 だけど妹の周りは、いつも必ず大人しくて目立ちはしないけれど、優しそうな友達が取り囲んでいた。

――ああ、うらやましい。

――それ、あたしがほしい。
 一度友達がいる目の前で妹にねだった。
 友達を一人、私にくれとせがんだ。

 妹が何か言いたそうに口を開いたその瞬間、友達が横やりを入れた。

――嫌だ。あんた、わがままだもん。