「お気に召しましたか?」

 カーテンを開けると、あたしの答えを知っているかのような顔で店員さんが待ち構えていた。

 こくりと一度うなずき、尋ねる。

「どうしてわかったんですか? あたしにこれが必要だって」
「いえ、わたしは何も。お客様がご自身の力で見つけられたんですよ」
「……あたしが見つけたんですね。今の自分に必要なものを」

 多分、これを着てみんなの前に現れたら、びっくりされるだろう。
 だけど、びっくりしたところで、誰もダサいなんて思わないはずだ。
 このスカートはあたしの良さをちゃんと引き出してくれるから。
 それに、第一――そこまでみんなあたしに関心なんて持ってない。

 もしも持っているとしたら、それは過剰にあたしを敵視している子だけ。
 そんな人の目なんて気にする必要はないんだ。

 こんな風に考えると、驚くほど肩の荷が下りたような軽さを覚えた。

 会計を済ませて外に出ると、やっぱり最初に感じたとおりの秋の匂いがした。
 でももし香水がなかったらもっとこの匂いを感じられるはずだ。
 人工的じゃない、自然な匂い。
 誰かに嗅いでもらうことなんてまるっきり考えていない、自然体の匂い。

 遠くの方で猫の鳴き声がした。
 姿は見えないけれど、さっきまであたしを嫌がっていた白猫の鳴き声のような気がする。
 近寄りこそしないけれど、遠くであたしのことを見守っているんじゃないかな。

 明日、学校であいつと話してみよう。
 入学してから数回しかしゃべったことがない。
 でも今なら、友達にまでなるとは思わないけれど、良い隣人になれる。

 あいつ――いや、彼女がどんな「福」を授かったのか、あたしがどんな「福」を授かったのか。
 そんな話から始めてみよう。



(6着目:完)