猫が逃げていった先は――探していた服屋だった。
何回も写真で見たから、一発でわかる。
いや、言い方を変えよう。
「ブティック」とか「洋品店」と言った方がしっくり来る外観。
あたしがいつも買いに行くような、キラキラしたオーラやイケイケのオーラはこれっぽちも感じられない。
ダサいっちゃダサい。
こういう個人経営のお店って、入るのを躊躇してしまう。
服屋でも、服屋じゃなくても。
大型の商業施設やチェーン店だと気兼ねなく入れる。
店員としゃべることなく買うこともできる。
気に入った服がなければ何も買わずに出られる。
そういうことをしても、心がちっとも痛まない。
個人のお店だと、店員に見られている感じがする。
店が小さいから、スタッフとの距離が近い。
だからおばちゃんとか、誰でもいいからしゃべりたいって人には向いてる。
たいていこういうお店って、おばちゃんが経営しているイメージだし。
あいつはだから逆にここで服を買えたんかもな。
ちゃんとアドバイスしてくれるお節介な人がいた、とか。
どんな人か、見てやろう。
ショーウインドウをちらっと見てから、ひと呼吸。
売ってる服の年代、けっこう幅があるな。
なんて思いながら店の手動ドアを開ける。
誰もいなかった。
ガラス戸越しに見ても、誰かがいそうな雰囲気ではなかったが、こうして入ってみても同じだ。
大丈夫か? いろんな意味で。
ひっそりした雰囲気の中を進んでいくと、
「にゃああああ」
足下にさっきの白猫がいた。
めっちゃいやがってるじゃん、あたしのことを。
とわかるくらい、顔を伏せて悲鳴を上げた。
このリアクション、もはや人間味がするわ。
何で? あたし何かしたか?
「きっと香水の匂いだと思います」
唐突に女の人の声がして、思わず飛び上がった。
こう見えてあたし、びびりなところがある。
「この猫、匂いにはけっこう敏感で」
「ああ、あたしの香水、ダメだったんですね……」
自分で自分の体を嗅いでみるが、わからない。
いつもと同じ量をつけているんだけどな。
「つけすぎ、なのかな……」
「わたしは問題ないですけど、敏感な人はちょっと苦手かもしれませんね」
そう言ってから女の人は、「わたしも昔、失敗したことあるので」とフォローを入れてくれる。
そっか。
この量がつけすぎだって、誰にも言われたことないけど、みんな黙ってるだけなのかな。
そう考えて、ぞっとした。
周りの人って実はあたしの嫌なところ知ってるけど、言ってくれてないのかも。
何回も写真で見たから、一発でわかる。
いや、言い方を変えよう。
「ブティック」とか「洋品店」と言った方がしっくり来る外観。
あたしがいつも買いに行くような、キラキラしたオーラやイケイケのオーラはこれっぽちも感じられない。
ダサいっちゃダサい。
こういう個人経営のお店って、入るのを躊躇してしまう。
服屋でも、服屋じゃなくても。
大型の商業施設やチェーン店だと気兼ねなく入れる。
店員としゃべることなく買うこともできる。
気に入った服がなければ何も買わずに出られる。
そういうことをしても、心がちっとも痛まない。
個人のお店だと、店員に見られている感じがする。
店が小さいから、スタッフとの距離が近い。
だからおばちゃんとか、誰でもいいからしゃべりたいって人には向いてる。
たいていこういうお店って、おばちゃんが経営しているイメージだし。
あいつはだから逆にここで服を買えたんかもな。
ちゃんとアドバイスしてくれるお節介な人がいた、とか。
どんな人か、見てやろう。
ショーウインドウをちらっと見てから、ひと呼吸。
売ってる服の年代、けっこう幅があるな。
なんて思いながら店の手動ドアを開ける。
誰もいなかった。
ガラス戸越しに見ても、誰かがいそうな雰囲気ではなかったが、こうして入ってみても同じだ。
大丈夫か? いろんな意味で。
ひっそりした雰囲気の中を進んでいくと、
「にゃああああ」
足下にさっきの白猫がいた。
めっちゃいやがってるじゃん、あたしのことを。
とわかるくらい、顔を伏せて悲鳴を上げた。
このリアクション、もはや人間味がするわ。
何で? あたし何かしたか?
「きっと香水の匂いだと思います」
唐突に女の人の声がして、思わず飛び上がった。
こう見えてあたし、びびりなところがある。
「この猫、匂いにはけっこう敏感で」
「ああ、あたしの香水、ダメだったんですね……」
自分で自分の体を嗅いでみるが、わからない。
いつもと同じ量をつけているんだけどな。
「つけすぎ、なのかな……」
「わたしは問題ないですけど、敏感な人はちょっと苦手かもしれませんね」
そう言ってから女の人は、「わたしも昔、失敗したことあるので」とフォローを入れてくれる。
そっか。
この量がつけすぎだって、誰にも言われたことないけど、みんな黙ってるだけなのかな。
そう考えて、ぞっとした。
周りの人って実はあたしの嫌なところ知ってるけど、言ってくれてないのかも。