わたしは帳簿を確認し、今日の来客予定を確認する。
 注文した商品が届くと、顧客帳簿(もちろん紙媒体だ)の電話番号に電話を掛け、何時頃に来られるのかを確認するのが母のやり方だった。それを今日も踏襲する。
 予定通りいくと、今日注文商品の受け取りに来るのは3人のお客さんだった。
 昔ながらの個人商店を支えるのはお得意様――わたしは心の中でイツメンと呼ばせてもらっているけど――だ。こんな田舎のブティックには、めったに一見様は訪れず、リピーターが売り上げのほとんどを占めている。

「さあ、それはどうだか」
「いや、初めましてのお客さんがよりによってこの期間に来るとか、ありえる?」
「……ないとはいえない。店主が代わると、引き寄せる神も代わる」
「そうなの?」
 わたしは首をかしげた。
 わたしが、違う神を引き寄せるとでも言うのだろうか。

――一体、どんなお客さんに出会えるのだろう。

 不安よりも期待が勝った。
 いつも見慣れたお得意様以外の、ここに服を求めてやってくるお客様。
 その一人一人に、商売ド素人のわたしが、ここでしか味わえない特別な体験を与えるのだ。
 世界に名だたる巨大資本にはない、世界にたった一つだけの価値を。

 もちろん、わたしの心強いビジネス・パートナーのイトと一緒に。

「……って、人が頼りにした途端、猫に戻るの!?」
「そりゃ、見知らぬ客に俺のヒト化した姿は眩しすぎるからな」
「このナルシスト! 裏切り者! 働けー!」


「……えっ?」

 イトにばかり気を取られていて、気がつかなかった。
 すでに入り口には、本日最初のお客様が来ていたことに。

 しかも、イトが予言したとおり、「ご新規様」――!?