黒燁と契約を結び――夫婦となって数週間が経った。

鬼は宙の家に住むことになった。
鬼の霊力により屋敷と庭は修繕、整備され、妖が集められ使用人として働くことになった。

宙は妻として何不自由ない暮らしをすることになったのだが、いつまでたっても落ち着かなかった。

「ドジをして、悪いことをしちゃった」
「いいんだよ、それが仕事なんだもの。私だって彼らに働いてもらわないと取りまとめ役としての仕事が無くなってしまって困るんだからね」
「雪ちゃん……」

ちなみに、このくるくる銀髪の猫娘は雪である。
宙の霊力が戻ったことで使役霊に昇格し、人型になれるようになったのだ。

「宙ちゃんは本来の仕事をしないとっ。そうしないと、そこの鬼さん、奥さんにほっとかれて子犬みたいに拗ねてますよ」
「誰が子犬だ」

と、黒燁は目を剥いたが、じゃあご夫婦でごゆっくり~と雪は屋敷の中に逃げて行ってしまった。

「どうした? 元気がないな」

しゅんとなっている宙に気付いて、黒燁は訝しんだ。