「天候がすっかり治まっている……」
「武水様は?」
「何故鬼と娘が共にいる?」
「あの娘は霊力がないはず。なのにどうして鬼を……」

鬼は当惑している能力者達を睨め回し、朗々とした声で告げた。

「聞け人間ども。我が名は二ツ角の鬼、黒燁。一千年の封印から目覚め、使役霊を酷使し驕り高ぶった人間どもに鉄槌を下すべく天災を起こしたが、今ここに、最高位の陰陽師である日河家の末裔である娘と契約を交わすこととした」

そうして黒燁は宙を抱き寄せた。

「人間どもよ、とくと目に焼き付けろ。この娘こそが、我が一千年待ちし花嫁。永遠の伴侶。今ここに契りを交わし、花嫁を介してお前達にとこしえの恩恵を約束しよう」

鬼は跪き、宙の指に口付けした。

「俺はお前のものに。お前は俺のものに。今より俺達は夫婦(めおと)だ」

雲が完全に消え、眩い陽光が境内に降り注いだ。

辺りは穏やかな静かさに包まれ、誰もが――世璃瑠でさえもが、黒燁と宙の契りを厳粛な心持で見入っていた。

こんなことになるとは、つい数時間前までは、想像だにしていなかった。
けれども、こうなることは、どこかで知っていた気がした。

心がずっと、待っていたから。

一千年の時を超えて、今この時この瞬間を黒燁と迎えることを、心の底から望んでいたのだ。