武水は口端を上げた。

「残念だったな。彼女はここにはいない」
「ああだろうな、さっきまであったあいつの匂いがしないからな。家に――結界に封じたな」

ふっ、と武水は返事の代わりに笑みを浮かべた。

「お前の考えなど一千年前からお見通した。罰によりあいつの一族は霊力が弱くなったが、あいつだけは例外で、その霊力は生まれながらにして並みのものではなかった。その力で俺の封印が解かれることを恐れて、お前はあいつを結界に封じるだけでは足りず、霊力をも抑えていたな?」
「彼女は私のものだ。一千年前にそうしただろう?」

にわかに鬼の瞳に怒りの色が浮かんだ。

「今度は違う。今度こそ、あいつは俺のものになる。そう運命が決めている。でなければ、なぜ俺はあいつによって封印を解かれたんだ?」

笑みが消えた武水に、鬼は指を掲げて見せた。
そこには、指輪が――宙が見つけたものと同じ装飾のものがあった。

「この指輪を通じて、俺とあいつは今も共鳴しあっている。そしてその度合いは強くなっている」