「どうしたの宙ちゃん?」

雪の声で、我に返った。

「ぼーっとして、どうしたの?」
「この指輪、もしかしたら」
「え?」

指輪を握り締め、宙は家の外に出た。

「待って宙ちゃん! 武水様言ったよね? 家に」
「いちゃだめなの!」
「え!?」
「この指輪があれば、どうにかなるかもしれない」
「何を言って……? 気持ちはわかるけれど、宙ちゃんじゃ無理だよ! 死んじゃうよ!」
「それでもいい、行くよ!」

宙は、自分でも驚くくらいの大声を出した。
雪もびっくりしている。
その毛玉のような身体を抱いて、宙は涙を堪えながら言った。

「私だって怖いよ。いったい何が起きているのか、どうなっちゃうのか……。でもやらなきゃ。だって、今止めないと、おばあちゃんの家が流されちゃうでしょ?」
「……宙ちゃん」
「私知ってるよ、今だって、雪ちゃんがおばあちゃんとの思い出を求めてあの家に行っていること。雪ちゃんにとってあの家は、とっても大切だってことも」

宙は涙を拭った。

「私、弱虫だし、何の力もない。だからって、大切な友達を、私のせいで悲しませたくないの!」

そう一気に言うと、宙は再び暴風雨が吹き荒ぶ街へと走って行った。