(これはきっと、あの鬼の仕業だわ……)

罪の意識に、宙は立っている気力も湧かず座り込んでしまった。
その肩を武水が強い力で掴むと、固い声で言った。

「君はこれ以上ここにいない方がいい。家に帰りなさい」
「い、家に? でもどうやって」

突然、境内から身をすくませるような絶叫が上がった。
様子がおかしい。
逃げまどっていた人々が、釘付けになって空を見上げている。

暴風が吹き荒ぶそこに、人が浮いていた。

いや、正しくは人の姿をした妖だった。

(あの時の鬼だ……)

宙は震えた。

鬼はゆっくりと下降し、境内に降り立った。

今や伝説となった妖の登場に、人々は逃げるのも忘れて、唖然となりながらその姿に見入る。

誰も自分の使役霊を使って立ち向かおうとしない。
最強最悪と称された妖を前に、尻込みしかできなかった。