辺りは騒然となった。

霊力がないだって?
そんな娘を巫女に?

非難の眼差しに囲まれ、宙は怯えきったように顔を蒼白とさせて立ち尽くした。

(いい気味だわ。……あの鬼、本当によくやってくれた)

世璃瑠は大げさに作り上げた怒りの形相の下でほくそ笑んだ。

そう、この悪天候の仕業は、あの鬼の仕業だった。

様々な災いをもたらすとされている鬼。
病魔になることもできれば、人間の心に潜んで悪心を植え付けることもでき、天候を操るという神の所業さえこなせた。

長年の封印のためか、解放された直後の鬼の霊力は僅かなものだった。

(だが腐っても鬼。最高クラスである私の霊力を分け与えれば、このくらいの天候操作はお手の物だったようね)

常に腹を空かせている野獣のようなあの化物に己の霊力を与え続けるのはなかなか骨が折れることだったが、宙の追放を目論む世璃瑠のシナリオは、ここに来て半分まで仕上がった。