導かれるように庭を進み、そして、苔がびっしり生えた石の前で止まった。
以前から邪魔だなと思っていた石だったけれど、両親が除けることなく残してあって、不思議に思ったのを覚えている。

「ええ? ここを掘るの?」
「……うん、なんとなく、ね」

「私のにゃんにゃんセンサーは、もっと違うところだって言っているんだけどなぁ」と、尻尾を落ち着かなく左右に振る雪に笑うと、宙はシャベルで石の下を掘り始めた。

硬い土を力を入れて少しずつ掘り起こしていく。

こつ。

すると、木に当たったような乾いた音がした。
さらに掘り進めて見ると、ボロボロになった小箱が出てきた。

宙と雪は顔を見合わせた。
そして、朽ち落ちないように、蓋をそっと開けてみる。

中には、ふたまわりくらい小さい木箱があった。
これも朽ちてはいたが、蓋の表に文字が書かれているのがわかる。
そして、その上に結ばれている注連縄も……。

「なんか。物々しい感じだね」
「うん……」
「ねぇ宙ちゃん、これ、もしかして開けない方がいいやつかも」

雪がそう言うそばから、宙は注連縄に手をかけていた。
開けない方がいいのは頭で分かっている。でも、

(取り戻さなくては)

不可解な思いに突き動かされていた。