「いつも、いつもそう! 武水様は古びた歴史しか取り柄のない宙ばかりを取り立てる! 武水様に相応しいのはこの私なのよ!?」

取り巻き達に当たり散らし、怒り任せに追い払った後も、世璃瑠の気は収まることはなかった。

「恐れ多くも、あの方の目は節穴なのですよ。家柄しか見ない古びた考えの人間なのです。世璃瑠様はこれほどに美しく、それだけでなく霊力も抜きんでていて、この物の怪一の霊力を誇る妖狐までをも使役できるお方だと言うのに、ああなんとも愚かしい、なんとも嘆かわ」
「おだまり狐!」

霊力を放出されて、きゃん、と妖狐は悲鳴を上げた。

「武水様を悪く言うのは許さなくてよ! 武水様はあの女に騙されているだけなのよ。罪人一族の分際で悲劇の末裔ぶって、武水様のお優しさに付け入っているのよ! ああ忌々しい、あんな女いなくなってしまえばいいのに……!」

突然、何か閃いたように押し黙ると、世璃瑠はニヤリと笑った。