「冗談じゃありませんわ!」

その中で大声を上げたのは、世璃瑠だった。

「僭越ながら、武水様、その選定には納得いきませんわ。だってその女は、霊力がないんですよ?」
「無いわけじゃないよ。極度に低いだけだ」
「同じですわ! 巫女には到底相応しくない!」

興奮する世璃瑠に、武水は涼しげに微笑んだ。

「あの祭の司祭者は僕だよ。あくまで巫女はその補佐で、霊力は関係ない」
「そうですけれども……!」
「むしろ重視するのは血だ。由緒ある鬼鎮祭の巫女が、同じく由緒ある家である宙の家が務めるのは、至極まっとうなことだろう?」

世璃瑠は押し黙った。

武水は、権勢を誇る世璃瑠家より零落しきった宙の家の方がずっと由緒正しいと言うのだ。

いつもの高慢な顔は、プライドが傷つけられた怒りで歪んでいた。
相手が武水でなければとうに吐き散らかしていた罵詈雑言を、唇を切れんばかりに引き結んで耐えている。

踵を返すと、世璃瑠は早足で教室を出て行ってしまった。
取り巻き達も慌てて後を追っていく。