「またあの家に行くの? 私あそこの人間、キライ。だってエラそうなんだもん」

毛玉のような身体をぶわぁっと逆立てて言う雪に、宙は笑いかけるしかなかった。

「こぉんな大きくて古いお家なんだからさ、なにかお金になる高価なもの残ってないのかな? ほら、本当に重要な物はどこかに埋めてあるって言うじゃない?」
「うん……まぁ……」
「うちのおばあちゃんも、畳の下にお金を隠したりしていたよ! よし! 私、ここ掘れにゃんにゃんするよ!」
「ええ?」

すっかり張り切った雪は、壁を通り抜けて庭に飛び出していった。
慌てて後を追いかけて、宙も庭に出た――その時だった。

そ…ら

声が聞こえた気がして立ち止まった。

「雪ちゃん、今呼んだ?」
「呼んでないよー」

と、鼻をひくひくさせて、雪はお宝探知に夢中だ。

(でも確かに聞こえた気が……)

宙。

「あ、また、聞こえた……」
「えー私は何も聞こえないよ?」

雪は怪訝そうに大きな目を瞬かせている。
確かに宙には聞こえた。

低くて、どこか優しさに満ちた、男の声が――。