物陰からひたすら蔵の様子を窺っているその怪しさといったら、それこそコソ泥のようなのだが、宙を懲らしめてやろうと夢中になっている世璃瑠は思いもつかない。

「しかしあの子、盗むのならもっと静かにできないものかしら。さっきからバタバタと騒々しくして、馬鹿ね」

蔵の中からは物音の他に宙の声も聞こえていた。
すると突然、宙が蔵から駆け出てきた。

「お待ちなさい宙! この泥棒! よくも――って、待ちなさいっ!」

世璃瑠の声にも気付かず、宙は全速力で走って行く。

「妖狐! 追って捕まえてきなさい」
「はい」

と返事したが、突然妖狐は耳をそばだてて、蔵に向かって警戒しだした。
その様子に気付いて、世璃瑠も蔵の中を見やる。

「……なんだか嫌な感じがするわね」
「霊気が流れてきます」

あの子、いったい何をやらかしたのかしら、と忌々しげに言いながら蔵に歩み寄る。

「いけません世璃瑠様。何か危険な感じが」
「問題ないわ。お前とわたくしの霊気なら、このくらいの霊気の魑魅魍魎など、なんてことはないでしょ」
「ですが何かこの霊気はただならぬ何かが」
「おだまり。ついてきなさい」

主に命じられては拒めない。
世璃瑠と妖狐は蔵の中に入っていった。