「ちっ」

鬼が舌打ちし、腕飾りから手を離したその時だった。

シャア!

雪が威嚇して、鬼に飛び掛かって行った。

「雪ちゃん!」
「宙ちゃん、今のうちに!」

思わず鬼が身を上げたすきに、宙は立ち上がり、走って蔵から飛び出した。

暗くなった道を無我夢中で走り続けた。
幸い、鬼が追ってくることはなかった。