顔を洗って、髪を整えて、制服に着替えて、宙は鏡の前に立った。

平凡な顔立ちをした、肌色も唇の色も悪い、痩せこけた十代の女の子がそこにいた。
長々と眺めていたくなくて目をそらすと、ぎゅうぅとお腹が情けない声を上げた。

朝食はロールパン一個とお水。
お腹が膨らむように、小さくちぎったのを食べて、その都度水を飲む。

「おはよう! 宙ちゃん」

一人の朝食を送る宙のそばに、綿飴みたいな白くてふわふわの毛をした猫が現れた。

「おはよう雪ちゃん。今日も相変わらず美味しそうだねぇ」

思わず毛玉みたいに浮いている雪をぎゅむぅと抱きしめる。
雪は使役霊ではないので、感触は感じられない。けれども、

「わわわ宙ちゃんくすぐったいよぉ」

と、喉がゴロゴロと鳴る可愛い音を聞いていると、空腹も紛れる気がした。

「宙ちゃん、ご飯、それだけ? 足りないよね? だいじょうぶ?」
「うん、今月は出費が多かったから。大丈夫だよ、今日は諏訪家に行く日だし」

ずきり。

胸がきしんだ。
安堵感と憂鬱な気持ちがごちゃ混ぜになった痛み。
収入が入るのは安心できるけれども、諏訪家を訪問すると毎回嫌な思いをさせられる。

でもこうするしかなかった。
両親が残してくれた貯金はとうに使い果たしたし、この大きいだけのがらんどうとした家にあるお金になりそうな物も、全部売ってしまった。