使役霊を持てない宙の父も定職に就くことができず、日雇い仕事を懸け持つしかなかった。
そんな父の代わりに働いたのが母だった。
だが母の使役霊も能力が低くかったため病魔に取り憑かれてしまい、母は若くして亡くなってしまった。
その病魔は母だけでは飽き足らず父にまで間の手を伸ばし――宙は、一人ぼっちになってしまった。

「頼る親戚もいなくて困っていたら、ここのお家のご当主様が助けてくれたの」

雪に身の上話を語りながら、宙は塀に囲まれた広い境内に建つ大きな社を見つめた。

白龍神社。

それがこの立派な神社の名前だった。
文字通り白龍を祀っており、その歴史は一千年以上。
伝承によると、高い霊力を持つ陰陽師が造営したのが始まりだという。
その末裔である現当主は、宙と同じ十七歳で、実は幼馴染でもあった。
そのよしみで、宙を色々と助けてくれているのだ。